間欠泉 (c)Laurette Chapuis

北海道長万部町の水柱と温泉と天然ガス

まだまだ暑い日が続いていますが、皆様如何お過ごしでしょうか。

本日は二十四節気では、秋の処暑。暑い日々が終わり秋らしくなる頃とされています……が……日中は35度程度まで気温は上がり、夕立・ゲリラ豪雨があり、それでも湿度は高く暑苦しいままと、秋らしい感じとはどこにあるのでしょうね?

さて。去る8日に、北海道長万部町の飯生神社の林の中で、突然勢いよく水が湧き出て柱のようになっているというニュースがありました。30メートルほどの高さまで勢いよく吹き上がっていて、大変な騒ぎになっているそうです。

このようにポンプなどの動力を使わなくても地表まで水・湯が吹き出る事を自噴と言いますが、滅多にある事ではありません。一部の温泉地のように、火山活動・マグマなどによって沸点を超える程熱せられている間欠泉は例外として、普通は山に囲まれた盆地や、非常に重たい岩盤層の下など、かなりの圧力がかからない限り地表まで吹き出る事はないのです。

ではどうして30mも吹き上がっているのかというと、恐らく地下に溜まっている天然ガスが、地下水もろとも吹き出しているからではないかと思うのですが……

実は、この天然ガス、温泉施設にとって非常に危険な代物なのです。かつて、東京都内のとある温泉施設では、その管理を怠り建物全体を吹き飛ばし死者が出るという大事故が起きてしまった事をご存じの方も居られると思います。

天然ガスの主成分はメタン、炭化水素です。プランクトン等が地層の中で圧力を受けて原油が生まれ、それが地熱で分解・気化して地層の隙間に溜まったものが天然ガスとなり、非常に燃えやすい性質を持っています。

温泉井戸では、温泉とともにこの可燃性ガスが一緒に出てくる事があります。また温泉の中にも溶け込んでいます。その為、温泉施設を作る際はガスの濃度を確認し、必要に応じたガス分離設備を設置、濃度が高くならないよう大気放流するようにしています。

皆さんが普段楽しまれている温泉、舞台裏では色々な事をして快適なお湯をご提供しています、というお話でした。

なお、長万部町の水柱は、残念ながら水温は低いようですが、自治体は温泉水だと発表しているので、温泉として認められる成分が一定以上含まれているのでしょう。ガス圧が下がった後、何らかの形で温泉ができたらいいなぁ、なんて井戸屋としては思ってしまいますが、どうなるんでしょうね。